No.201, No.200, No.199, No.198, No.197, No.196, No.195[7件]
#語彙トレ2026 01/20 - 焦燥
眠るのは苦手だ。
夢にはよく、彼らが現れる。未来を共にするのだと信じていた頃の、厳しくも優しい記憶。ほんの少し時間を稼げばきっと解決策が見つかると、次こそはすべてを終わらせると、約束し合った。
時と共に少しずつ崩れていくそれが、どんな凄惨な戦いよりも苦い悪夢だ。
目覚めれば、誰もいない。あれからどれだけ時が経ったのか、未だ成し遂げられない、終わりの見えない使命。彼らの信じた未来を、疑いたくない。絶望したくないのに。
宵闇の中で、ひりつくような焦燥が身を焦がす。
眠るのは苦手だ。
夢にはよく、彼らが現れる。未来を共にするのだと信じていた頃の、厳しくも優しい記憶。ほんの少し時間を稼げばきっと解決策が見つかると、次こそはすべてを終わらせると、約束し合った。
時と共に少しずつ崩れていくそれが、どんな凄惨な戦いよりも苦い悪夢だ。
目覚めれば、誰もいない。あれからどれだけ時が経ったのか、未だ成し遂げられない、終わりの見えない使命。彼らの信じた未来を、疑いたくない。絶望したくないのに。
宵闇の中で、ひりつくような焦燥が身を焦がす。
#語彙トレ2026 01/19 - 脆弱
「理論的には成功率は既に百パーセントだ。そうでなければ、条件を満たした時点で、記憶を保持したまま、元の肉体と似た条件を備えた肉体に、むりやり魂を転生させる魔術を人間に付与することなど許されない。しかしまだ改良の余地はある。作戦決行の日までに、外部からの干渉に対する脆弱性を減らし、安定性を高めること。それが、僕の使命だ」
そう皆の前で決意を語ったダミアンも、後ろで熱心に頷いていたフレアも、最後まで全力を尽くしたことは疑いようもない。どんなに全力を尽くしたところで、どうにもならないことは、どうにもならない。ただ、それだけのことだ。
「理論的には成功率は既に百パーセントだ。そうでなければ、条件を満たした時点で、記憶を保持したまま、元の肉体と似た条件を備えた肉体に、むりやり魂を転生させる魔術を人間に付与することなど許されない。しかしまだ改良の余地はある。作戦決行の日までに、外部からの干渉に対する脆弱性を減らし、安定性を高めること。それが、僕の使命だ」
そう皆の前で決意を語ったダミアンも、後ろで熱心に頷いていたフレアも、最後まで全力を尽くしたことは疑いようもない。どんなに全力を尽くしたところで、どうにもならないことは、どうにもならない。ただ、それだけのことだ。
#語彙トレ2026 01/18 - 伏流
帰ってきたらあんたが恥ずかしくなるくらいカッコイイ英雄の歌を捧げてやるよ、と言ったゲイリーに、男は微かに笑って肩をすくめた。その笑みの底に伏流していた感情は、今思えば「諦め」だったのかもしれない。
「ついでに歴代の英雄が歪みを根本的に解決する方法を探し続けていることも歌っておいてください。多くの方に歪みの研究を手がけていただけるように」
「なんだそりゃ。助けを求める英雄様なんてあんまり格好良くならない気がするけどなあ」
「実際、そういうものですよ。一人が成し遂げられることなど、せいぜい時間稼ぎでしかないのです。私は戦うことしか能がありませんから」
帰ってきたらあんたが恥ずかしくなるくらいカッコイイ英雄の歌を捧げてやるよ、と言ったゲイリーに、男は微かに笑って肩をすくめた。その笑みの底に伏流していた感情は、今思えば「諦め」だったのかもしれない。
「ついでに歴代の英雄が歪みを根本的に解決する方法を探し続けていることも歌っておいてください。多くの方に歪みの研究を手がけていただけるように」
「なんだそりゃ。助けを求める英雄様なんてあんまり格好良くならない気がするけどなあ」
「実際、そういうものですよ。一人が成し遂げられることなど、せいぜい時間稼ぎでしかないのです。私は戦うことしか能がありませんから」
#語彙トレ2026 01/17 - 蠱惑
「見ろ! この蠱惑的なラインを! 最高だと思わないか!?」
新作の銃を受け取りに行ったユリウスを迎えたのは、ちょっと近寄り難いくらい興奮しているダミアンだった。
「この機能美は鍛え上げられた身体にも通じるものだ。つまり君も充分美しいぞ」
さすがにこの変態トークに長く付き合うのは御免被りたい。手っ取り早く我に返ってもらう方法はないだろうか。少し考えたユリウスは、身を乗り出してゆっくりとダミアンの顔を覗き込み、よそ行きの笑顔を浮かべた。
「それ、僕も蠱惑的だってことですか?」
ダミアンが一瞬で真顔になる。
「どこで覚えてきたんだそんなの」
「見ろ! この蠱惑的なラインを! 最高だと思わないか!?」
新作の銃を受け取りに行ったユリウスを迎えたのは、ちょっと近寄り難いくらい興奮しているダミアンだった。
「この機能美は鍛え上げられた身体にも通じるものだ。つまり君も充分美しいぞ」
さすがにこの変態トークに長く付き合うのは御免被りたい。手っ取り早く我に返ってもらう方法はないだろうか。少し考えたユリウスは、身を乗り出してゆっくりとダミアンの顔を覗き込み、よそ行きの笑顔を浮かべた。
「それ、僕も蠱惑的だってことですか?」
ダミアンが一瞬で真顔になる。
「どこで覚えてきたんだそんなの」
#語彙トレ2026 01/16 - 氷解
「失敗した……っ」
たまり場の前を通りかかったところでアナベラの悲痛な叫びが聞こえて、ユリウスは思わず足を止めた。
「どうかしたんですか、アナベラさん」
たまり場のソファでがっくりとうなだれているアナベラに声をかけると、彼女は無言で両手を挙げた。両手にはまったく同じ装丁の本が一冊ずつ。
今日彼女は楽しみにしていた新刊本を買いに出かけた。そしてテーブルの上にはオンライン書店のロゴが入った段ボールが一つ。
疑問が氷解したユリウスは、「一冊買い取りましょうか」と提案してみる。
「あなた、気を遣いすぎよ……」
「いえ、興味はあるので」
「失敗した……っ」
たまり場の前を通りかかったところでアナベラの悲痛な叫びが聞こえて、ユリウスは思わず足を止めた。
「どうかしたんですか、アナベラさん」
たまり場のソファでがっくりとうなだれているアナベラに声をかけると、彼女は無言で両手を挙げた。両手にはまったく同じ装丁の本が一冊ずつ。
今日彼女は楽しみにしていた新刊本を買いに出かけた。そしてテーブルの上にはオンライン書店のロゴが入った段ボールが一つ。
疑問が氷解したユリウスは、「一冊買い取りましょうか」と提案してみる。
「あなた、気を遣いすぎよ……」
「いえ、興味はあるので」
#語彙トレ2026 01/15 - 残滓
なぜ本気のだるまさんが転んだが始まってしまったのか、その場に居合わせたユリウスにもまったく理解の及ばないところだった。ダリアとセルゲイが酔っ払って喧嘩を始めたところで、まだ酔っていないはずのフレアが「勝負を決めるならだるまさんが転んだだー!」と叫んだのがきっかけだった気がするが、そんなことで良い大人が本気の勝負をこの形式で始めることなどあるだろうか? 到底信じられない成り行きなのだが、なぜかダミアン以外の全員がやる気だ。
驚愕の残滓を拭いきれずに呆然としながらも、ユリウスは手を抜かず律儀に「こ」のところで動きを止めた。
なぜ本気のだるまさんが転んだが始まってしまったのか、その場に居合わせたユリウスにもまったく理解の及ばないところだった。ダリアとセルゲイが酔っ払って喧嘩を始めたところで、まだ酔っていないはずのフレアが「勝負を決めるならだるまさんが転んだだー!」と叫んだのがきっかけだった気がするが、そんなことで良い大人が本気の勝負をこの形式で始めることなどあるだろうか? 到底信じられない成り行きなのだが、なぜかダミアン以外の全員がやる気だ。
驚愕の残滓を拭いきれずに呆然としながらも、ユリウスは手を抜かず律儀に「こ」のところで動きを止めた。

右腕の凝結した血液を容赦なく拭き取れば、その下から傷一つない肌が出てくる。
「これくらい治れば実用的か。しかし、実験例に事欠かないのはいいけど、君たちは怪我しすぎだよ」
治癒の弾丸の実験結果と共にもたらされた評価に、ユリウスは恐縮する。
「すみません」
「アシュトンに聞いたらすごい適当な答えが返ってきたから君に聞いておきたいんだけど、反動による疲労感はどの程度?」
「二時間全力で訓練した程度です」
「なるほど。体力の前借りをもうちょっと緩やかにしたいところだな」
カルテに書き込みながら、ダミアンはもう既に改良の方法を考え始めているようだった。
おまけ
アシュトン「えー、疲労感の程度? だりーなー煙草吸いてえ、くらい」
ダミアン「さっぱりわからん。だいたい君が煙草を吸いたいのはいつものことだろう」
アシュトン(肩をすくめる)
ダミアン「ところで毎回生傷が絶えないのはなんとかならないのか?」
アシュトン「活動に支障が出ねえ程度には抑えてるだろ。治癒の実験もできるし一石二鳥じゃねえか」
ダミアン「君たちはドMなのか?」