2026年2月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

#語彙トレ2026 02/17 - 陶酔

 早朝にもかかわらずラボからダミアンの高笑いが聞こえる。何かに陶酔したような「実験は成功だ!」という叫びは、明らかに徹夜明けの興奮状態から来たものだろう。
 深夜に起き出したフレアが「いいこと思いついたー!」と言いながらダミアンをラボまで引きずっていったことは、ユリウスも廊下に響いていた騒音で把握している。トレーニングを諦めて二人を寝かせに行くべきだろうか。
 考えていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くとタオルを片手に持ったアナベラが苦笑している。
「あんまり気を遣わなくていいわよ。あれでも良い大人なんだから、そのうち自分たちで寝に行くでしょ」

創作

#語彙トレ2026 02/16 - 忘却

 風呂から上がると、ちょうどアシュトンがリーアに怒られているところだった。風呂上がりのユリウスは暖簾の影から、このままロビーに出て行っていいものか考える。
「いいですか。この時代、確かに忘却は救いになることもあり得ます。しかしながら、記録を残す重要性に変わりはありません。未来に残る可能性が未知数とはいえ、我々が残した記録が、後世の人間を救う可能性があることは貴方もわかっているはず」
「わかっちゃいるが、三歩あるいたら忘れちまうんだよなあ」
 なぜ煽る。しばらく出て行けないことを覚悟したユリウスは、脱衣所に引き返して自販機の牛乳を味わうことに決めた。

創作

#語彙トレ2026 02/15 - 払暁

 もうすぐ夜が明ける。迫る払暁を待ちながら、ライルはもうすぐ終わる旅の最後の道筋を思い出していた。かつてユリウスだった頃、皆と辿った旅路。そして今は四回目の旅だ。一人で歪みの中心と対峙するのも三回目。余程のヘマをしなければ、負けることはない。
 しかし三回目の転生までに三百年。それだけの時間があったのに、崩壊した文明の復興は未だ遠く、歪みの根源が何なのか、どうしたら根本的な解決ができるのか、真実もまだ闇の中だ。
(このままでは駄目だ)
 自分がいつ下手を打たないとも限らない。文明の発展を加速させ、歪みの研究を進め、後継者を育成する手段が必要だった。

創作

#語彙トレ2026 02/14 - 果断

「くそー、勝ち筋が見えねえー」
 ハルバードを抱えて床に寝そべったレグルスがそのまま器用にごろごろと転がっている。先ほどまでの果断に攻める戦い方が嘘のようなその姿に苦笑しながら、ユリウスは目線が近くなるように腰を落とす。
「僕との戦い方の相性で言えば、弾切れまで粘るのが正解でしょうね。銃弾には限りがありますが、武器に直接付与された魔術は実質的には回数制限がありませんから」
「でもお前魔力チャージの隙狙ってくるじゃん!」
「それはまあ……」
「師匠の性格の悪さ、うつってきてない?」
「否定できませんね」
 苦笑と肯定しか返せないのが困ったところだ。

創作

#みん好きわっしょい - みんなお揃い

「なあなあ、なんか制服とか作ろうぜ。みんなお揃いの服着たらチームワークアップしそうじゃねえか?」
 副リーダー的な立ち位置にいる巨漢のセルゲイが、思いついたことをそのまま口にする傾向にあることは短い付き合いの中で既にわかっていた。
「えー、やだね。面倒くさい」
 即座に反対したのは元傭兵のアシュトンだ。紙巻き煙草をくわえた無精髭の男は、戦っている時以外基本的にやる気がない。
「私も反対です。回せる予算がありません」
 参謀役のリーアにはっきりと言われたセルゲイは、あからさまにしゅんと肩を落とすが、諦める気は微塵もないようだった。
「そんなこと言わずに。もっとこう、交友を深めようじゃねえか! なあ!」
 こうなると後が長いが、戦い方がバラバラの面子で制服を作るのも現実的ではないだろう。
「制服を作るのは難しいかもしれませんが、所属を表すものが何もないのも事実です。小さめの記章くらいなら作っても良いのでは」
 ユリウスが妥協案を出すと、黒いゴシック調のドレスに身を包んだドローレスが「いいわね」と頷いた。彼女はたぶん、制服を着る羽目になるくらいなら妥協案に飛びついておけと思っている。
「髑髏とか入れて良ければ私がデザインするわよ」
「それはいいな。採用!」
 黙って話を聞いていた最年長にしてこの討伐隊のまとめ役であるダリアが頷いてしまったので、ゴシックデザインの記章を作ることは決定事項になってしまった。
 それでいいのかと悩むものの、ユリウスには彼らの勢いを止める術はない。

創作

#語彙トレ2026 02/13 - 歪曲

 お茶の時間に出てきたのは紅茶ではなく二つのライフルスコープだった。「どちらが良いと思う?」と尋ねるドローレスは、どうやらユリウスの答えを茶菓子の代わりにするつもりのようだ。
「こちらの方が歪みが少ないですが、少し暗いですね」
「そうね。歪曲収差はそんなに重要じゃないわ。中心で捉えて撃つから、周辺の歪みは慣れでカバーできる。重要なのはターゲットの識別精度と煙対策かしら。動き回る貴方たちを後ろから誤射しないようにね」
 もしかして後衛を意識して動けと言われているのだろうか。表情を伺うと、ドローレスは「よくできました」と言いたげに艶やかな笑みを浮かべた。

創作

#語彙トレ2026 02/12 - 呪縛

「戦闘データを分析した結果、歪みの怪物に神経が通っているとは限らないことが確認できた。神経に干渉する術や薬剤は使ってみなければ効果があるかどうかわからないということだ」
「そこでこれです。じゃじゃーん!」
 銃を使うメンバーを集めたのは、相変わらず温度差の酷いダミアンとフレアのコンビだ。得意げなフレアから渡されたのは、新たな魔術を封じた弾丸だった。
「相手の影と本体との間に強力な重力を発生させることで、動きを封じる呪縛の魔術弾。名付けて《影縛》!」
「これを相手の影に撃ち込み、二秒ほど待つことで発動する。発動までに遅延があることには注意が必要だ」

創作

#語彙トレ2026 02/11 - 昏倒

 厨房で昏倒しているフレアの側で、レグルスがおろおろしている。
「何を食べさせたんですか」
 飲み物を取りに来ただけなのに現場に遭遇してしまったユリウスは、喉の渇きを脇に置いてため息をつく。
「俺の非常食に興味があるって言うから……」
 泣きそうなレグルスの回答に、それは確か一般人には罰ゲームでしかないと言われている気付け用の激辛軍用ペーストではなかったかと考えて、天を仰いだ。
「反省シテマス」
 本人が反省しているなら責めるべきではないだろう。とりあえずフレアを起こして口直しにヨーグルト飲料でも飲ませるかと、ユリウスは後始末の手順を考え始めた。

創作

#語彙トレ2026 02/10 - 瓦礫

「ま、こんなんでも止められるようになっただけマシだな」
 瓦礫の上で紙巻き煙草をふかしながら、アシュトンはいつもと変わらぬ調子でうそぶく。
「そうだな。あたしがぶち当たった歪みは塵一つ残さなかったよ」
 ダリアは頷いて転がった硝子の破片をつま先で蹴飛ばした。
「もっと早く具現化の力が見つかってりゃ、救えた命もあるんだろうなあ」
 しゃがみ込んだセルゲイも、どこか虚ろな瞳で空を見上げる。
「次はそんな風にならないように、あらゆる手段を尽くして記憶を未来に繋げるんですよ。たとえ禁忌に触れたとしても」
 拳を握りしめるダミアンに、フレアとレグルスも頷いた。

創作

#語彙トレ2026 02/09 - 翻弄

 討伐隊が最初に倒した歪みの核は、巨大な芋虫の頭が割れたところから苦悶する人間の顔が生えているという、見ただけで気分が悪くなるような姿をしていた。その顔には、ユリウスも見覚えがあった。以前アシュトンとふざけ合っていた、元傭兵のニールだ。
「視覚で動いていたな」
 倒した怪物が虹色の光だけを残して跡形もなく消え去った後で、アシュトンがぽつりと呟く。
「それに、動き方にあいつの癖が残ってやがった。思考が人間ってことは、人間相手のフェイントが効くってことだ」
 怪物を容赦なく翻弄していた男は、愛惜を隠して淡々と事実を並べた。

創作

#語彙トレ2026 02/08 - 禁忌

「聞いての通り、この作戦は命と引き替えに歪みの元を封印するというものだ。本来ならば、このような作戦に君たちのような未来のある若者を招聘することはあり得ない」
 討伐隊が結成された初日、リーアとセルゲイを両脇に控えさせたダリアはユリウスとレグルスを前にそう淡々と告げた。
「しかし、このままでは君たちに残すべき未来すらも危うい。それが、我々が君たちを招聘し、禁忌を犯すと決めた理由だ」
「禁忌……?」
 思わず漏れ出たユリウスの疑問を咎めることもなく、ダリアは静かに頷く。
「そう。極秘事項なので今日まで明かせなかったが、この作戦には魂の操作も含まれている」

創作

グレムくん! 怪しすぎるよグレムくん! 声で疑って悪かったと思ってるけど声を抜きにしても怪しい……疑惑の目で見てしまう……
#AFK_Journey

ゲーム

#語彙トレ2026 02/07 - 深淵

 淡い虹色の煌めきが舞う。祝祭を彩る花吹雪のようなそれが、滅びの前兆だ。
 舞い踊る光は引き付けられるように人に群がり、歪みの核にしてしまう。核となった人間は誰も触れることのできない虹色の怪物となり、周囲のものを呑み込みながら膨れあがり、やがて空間そのものを呑み込むような「穴」を出現させて消える。その穴は数日の時間をかけて縮み、やがて消えるけれど、それまでは触れたものすべてを呑み込む深淵だ。
 その向こうに何があるのかは、誰も知らない。歪みに呑み込まれて帰ってきた者はいないからだ。
 歪みの核を具現化させて倒すことが、現状では唯一の対抗策だった。

創作

#語彙トレ2026 02/06 - 遡及

「つまり~、過去に遡及して記憶を記録する方法を思いついたわけえ」
 フレアの間延びした言葉を、ダミアンが真剣な表情で聞き取ろうとしている。
「記憶というか意識そのものを魂に刻み込む感じだねえ。あ、ほんとに刻み込むわけじゃないんだけどお」
「それはわかったから術式を早く」
 先ほどから堪えきれない様子で貧乏揺すりをしていたダミアンが、ついに先を促した。
「えー」
 フレアが不満げに唇を尖らせながら描いた魔術式は、ユリウスから見てもどうやって動いているのか不思議に思えるほど混乱していた。
「これを……読み解くのか……」
 ダミアンの眼鏡が絶望に曇る。

創作