No.234, No.233, No.232, No.231, No.230, No.229, No.2287件]

#語彙トレ2026 02/19 - 剽悍

 セルゲイの斧がうなりを上げて迫る。荒削りで剽悍な戦いぶりは、アシュトンやドローレスの戦い方とはまったく違うものだ。軌道が読みやすいと思いきや、斧に込められた筋力増強の魔術を妙なタイミングで発動させ、突然あり得ない筋力で予想できない動きをしてくることがあるので油断できない。
「ハッハァ! 魔物はこういう動きすんだろ!?」
 戦斧もそうだが、この大声も圧が強い。ユリウスが苦手なタイプだ。妙に楽しそうなのは二人と一緒だが、セルゲイは圧倒的にうるさい。
「余裕ですね」
「んなわけねえだろ! この天才!」
 うるさいが、魔物との戦いを想定した訓練には最適だ。

日記

#語彙トレ2026 02/18 - 執着

「なあ、断っちまって良かったのかよ。アレってアレだろ? 本気の告白ってやつ」
「そうですね。たぶん……」
 あまり見られたいシーンではなかったな、と思いながら、ユリウスは心配そうなレグルスに頷く。
「今、この状況で、こちらに想いがないのに受け入れるのは誠実ではない、と思ったんです」
「そっか~。俺だったら最後の思い出作りにって受けちまうけどなあ」
 そういった考え方もあるのだろう。ただ、自分には恐らく向いていない。
「僕は一つのことに執着する性質なので、今は任務に集中したいんです」
 静かに答えたユリウスに、レグルスはもう一度「そっかー」と呟いた。

創作

#語彙トレ2026 02/17 - 陶酔

 早朝にもかかわらずラボからダミアンの高笑いが聞こえる。何かに陶酔したような「実験は成功だ!」という叫びは、明らかに徹夜明けの興奮状態から来たものだろう。
 深夜に起き出したフレアが「いいこと思いついたー!」と言いながらダミアンをラボまで引きずっていったことは、ユリウスも廊下に響いていた騒音で把握している。トレーニングを諦めて二人を寝かせに行くべきだろうか。
 考えていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くとタオルを片手に持ったアナベラが苦笑している。
「あんまり気を遣わなくていいわよ。あれでも良い大人なんだから、そのうち自分たちで寝に行くでしょ」

創作

#語彙トレ2026 02/16 - 忘却

 風呂から上がると、ちょうどアシュトンがリーアに怒られているところだった。風呂上がりのユリウスは暖簾の影から、このままロビーに出て行っていいものか考える。
「いいですか。この時代、確かに忘却は救いになることもあり得ます。しかしながら、記録を残す重要性に変わりはありません。未来に残る可能性が未知数とはいえ、我々が残した記録が、後世の人間を救う可能性があることは貴方もわかっているはず」
「わかっちゃいるが、三歩あるいたら忘れちまうんだよなあ」
 なぜ煽る。しばらく出て行けないことを覚悟したユリウスは、脱衣所に引き返して自販機の牛乳を味わうことに決めた。

創作

#語彙トレ2026 02/15 - 払暁

 もうすぐ夜が明ける。迫る払暁を待ちながら、ライルはもうすぐ終わる旅の最後の道筋を思い出していた。かつてユリウスだった頃、皆と辿った旅路。そして今は四回目の旅だ。一人で歪みの中心と対峙するのも三回目。余程のヘマをしなければ、負けることはない。
 しかし三回目の転生までに三百年。それだけの時間があったのに、崩壊した文明の復興は未だ遠く、歪みの根源が何なのか、どうしたら根本的な解決ができるのか、真実もまだ闇の中だ。
(このままでは駄目だ)
 自分がいつ下手を打たないとも限らない。文明の発展を加速させ、歪みの研究を進め、後継者を育成する手段が必要だった。

創作

#語彙トレ2026 02/14 - 果断

「くそー、勝ち筋が見えねえー」
 ハルバードを抱えて床に寝そべったレグルスがそのまま器用にごろごろと転がっている。先ほどまでの果断に攻める戦い方が嘘のようなその姿に苦笑しながら、ユリウスは目線が近くなるように腰を落とす。
「僕との戦い方の相性で言えば、弾切れまで粘るのが正解でしょうね。銃弾には限りがありますが、武器に直接付与された魔術は実質的には回数制限がありませんから」
「でもお前魔力チャージの隙狙ってくるじゃん!」
「それはまあ……」
「師匠の性格の悪さ、うつってきてない?」
「否定できませんね」
 苦笑と肯定しか返せないのが困ったところだ。

創作

#みん好きわっしょい - みんなお揃い

「なあなあ、なんか制服とか作ろうぜ。みんなお揃いの服着たらチームワークアップしそうじゃねえか?」
 副リーダー的な立ち位置にいる巨漢のセルゲイが、思いついたことをそのまま口にする傾向にあることは短い付き合いの中で既にわかっていた。
「えー、やだね。面倒くさい」
 即座に反対したのは元傭兵のアシュトンだ。紙巻き煙草をくわえた無精髭の男は、戦っている時以外基本的にやる気がない。
「私も反対です。回せる予算がありません」
 参謀役のリーアにはっきりと言われたセルゲイは、あからさまにしゅんと肩を落とすが、諦める気は微塵もないようだった。
「そんなこと言わずに。もっとこう、交友を深めようじゃねえか! なあ!」
 こうなると後が長いが、戦い方がバラバラの面子で制服を作るのも現実的ではないだろう。
「制服を作るのは難しいかもしれませんが、所属を表すものが何もないのも事実です。小さめの記章くらいなら作っても良いのでは」
 ユリウスが妥協案を出すと、黒いゴシック調のドレスに身を包んだドローレスが「いいわね」と頷いた。彼女はたぶん、制服を着る羽目になるくらいなら妥協案に飛びついておけと思っている。
「髑髏とか入れて良ければ私がデザインするわよ」
「それはいいな。採用!」
 黙って話を聞いていた最年長にしてこの討伐隊のまとめ役であるダリアが頷いてしまったので、ゴシックデザインの記章を作ることは決定事項になってしまった。
 それでいいのかと悩むものの、ユリウスには彼らの勢いを止める術はない。

創作