No.194

#語彙トレ2026 01/14 - 隠微

「私には前世の記憶があるのですよ」
 にこやかにあり得ないことを言い出した男の表情に滲む隠微な感情が何なのか、吟遊詩人として人を見る目があるつもりのゲイリーにも読み取ることができなかった。
 得体の知れない男だが、命の恩人だ。突然現れた歪みを実体化させ、本当に人間なのか疑いたくなる強さで倒してしまった。襟元についている記章は祈導教会の正神官のものだし、歪みを倒した後の第一声は「夕食を一緒にいかがですか」だったので、少なくとも野盗の類ではないだろう。
「それ、マジ?」
「ええ、本当です」
 何かを諦めたような微笑に、信じてみてもいいかなと少し思った。

創作