No.216

#語彙トレ2026 02/04 - 残照

 残照の中に浮かび上がる遺跡が、僅かに以前討伐隊の面々と暮らした基地の名残をとどめているのを見る。歪みに侵食されたのだろう、不自然な円形に欠けたかつての統合本部は、夕日の中に黒くその巨体を浮かび上がらせている。
 見捨てられた大地を越えなければ辿り着けないこの場所に当然人の気配はなく、ただ荒涼とした建築物の名残と、それを覆う植物があるばかりだ。数百年という年月が、かつての生活を跡形もなく消し去ってしまった。基地の隅にあったはずの宿舎も、撤去でもされたのか跡形すらもない。
 ――ここにはもう、何もない。
 ただそれを確かめるための寄り道だった。

創作