No.230, No.229, No.228, No.227, No.226, No.225, No.2247件]

#語彙トレ2026 02/15 - 払暁

 もうすぐ夜が明ける。迫る払暁を待ちながら、ライルはもうすぐ終わる旅の最後の道筋を思い出していた。かつてユリウスだった頃、皆と辿った旅路。そして今は四回目の旅だ。一人で歪みの中心と対峙するのも三回目。余程のヘマをしなければ、負けることはない。
 しかし三回目の転生までに三百年。それだけの時間があったのに、崩壊した文明の復興は未だ遠く、歪みの根源が何なのか、どうしたら根本的な解決ができるのか、真実もまだ闇の中だ。
(このままでは駄目だ)
 自分がいつ下手を打たないとも限らない。文明の発展を加速させ、歪みの研究を進め、後継者を育成する手段が必要だった。

創作

#語彙トレ2026 02/14 - 果断

「くそー、勝ち筋が見えねえー」
 ハルバードを抱えて床に寝そべったレグルスがそのまま器用にごろごろと転がっている。先ほどまでの果断に攻める戦い方が嘘のようなその姿に苦笑しながら、ユリウスは目線が近くなるように腰を落とす。
「僕との戦い方の相性で言えば、弾切れまで粘るのが正解でしょうね。銃弾には限りがありますが、武器に直接付与された魔術は実質的には回数制限がありませんから」
「でもお前魔力チャージの隙狙ってくるじゃん!」
「それはまあ……」
「師匠の性格の悪さ、うつってきてない?」
「否定できませんね」
 苦笑と肯定しか返せないのが困ったところだ。

創作

#みん好きわっしょい - みんなお揃い

「なあなあ、なんか制服とか作ろうぜ。みんなお揃いの服着たらチームワークアップしそうじゃねえか?」
 副リーダー的な立ち位置にいる巨漢のセルゲイが、思いついたことをそのまま口にする傾向にあることは短い付き合いの中で既にわかっていた。
「えー、やだね。面倒くさい」
 即座に反対したのは元傭兵のアシュトンだ。紙巻き煙草をくわえた無精髭の男は、戦っている時以外基本的にやる気がない。
「私も反対です。回せる予算がありません」
 参謀役のリーアにはっきりと言われたセルゲイは、あからさまにしゅんと肩を落とすが、諦める気は微塵もないようだった。
「そんなこと言わずに。もっとこう、交友を深めようじゃねえか! なあ!」
 こうなると後が長いが、戦い方がバラバラの面子で制服を作るのも現実的ではないだろう。
「制服を作るのは難しいかもしれませんが、所属を表すものが何もないのも事実です。小さめの記章くらいなら作っても良いのでは」
 ユリウスが妥協案を出すと、黒いゴシック調のドレスに身を包んだドローレスが「いいわね」と頷いた。彼女はたぶん、制服を着る羽目になるくらいなら妥協案に飛びついておけと思っている。
「髑髏とか入れて良ければ私がデザインするわよ」
「それはいいな。採用!」
 黙って話を聞いていた最年長にしてこの討伐隊のまとめ役であるダリアが頷いてしまったので、ゴシックデザインの記章を作ることは決定事項になってしまった。
 それでいいのかと悩むものの、ユリウスには彼らの勢いを止める術はない。

創作

#語彙トレ2026 02/13 - 歪曲

 お茶の時間に出てきたのは紅茶ではなく二つのライフルスコープだった。「どちらが良いと思う?」と尋ねるドローレスは、どうやらユリウスの答えを茶菓子の代わりにするつもりのようだ。
「こちらの方が歪みが少ないですが、少し暗いですね」
「そうね。歪曲収差はそんなに重要じゃないわ。中心で捉えて撃つから、周辺の歪みは慣れでカバーできる。重要なのはターゲットの識別精度と煙対策かしら。動き回る貴方たちを後ろから誤射しないようにね」
 もしかして後衛を意識して動けと言われているのだろうか。表情を伺うと、ドローレスは「よくできました」と言いたげに艶やかな笑みを浮かべた。

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#語彙トレ2026 02/12 - 呪縛

「戦闘データを分析した結果、歪みの怪物に神経が通っているとは限らないことが確認できた。神経に干渉する術や薬剤は使ってみなければ効果があるかどうかわからないということだ」
「そこでこれです。じゃじゃーん!」
 銃を使うメンバーを集めたのは、相変わらず温度差の酷いダミアンとフレアのコンビだ。得意げなフレアから渡されたのは、新たな魔術を封じた弾丸だった。
「相手の影と本体との間に強力な重力を発生させることで、動きを封じる呪縛の魔術弾。名付けて《影縛》!」
「これを相手の影に撃ち込み、二秒ほど待つことで発動する。発動までに遅延があることには注意が必要だ」

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#語彙トレ2026 02/11 - 昏倒

 厨房で昏倒しているフレアの側で、レグルスがおろおろしている。
「何を食べさせたんですか」
 飲み物を取りに来ただけなのに現場に遭遇してしまったユリウスは、喉の渇きを脇に置いてため息をつく。
「俺の非常食に興味があるって言うから……」
 泣きそうなレグルスの回答に、それは確か一般人には罰ゲームでしかないと言われている気付け用の激辛軍用ペーストではなかったかと考えて、天を仰いだ。
「反省シテマス」
 本人が反省しているなら責めるべきではないだろう。とりあえずフレアを起こして口直しにヨーグルト飲料でも飲ませるかと、ユリウスは後始末の手順を考え始めた。

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#語彙トレ2026 02/10 - 瓦礫

「ま、こんなんでも止められるようになっただけマシだな」
 瓦礫の上で紙巻き煙草をふかしながら、アシュトンはいつもと変わらぬ調子でうそぶく。
「そうだな。あたしがぶち当たった歪みは塵一つ残さなかったよ」
 ダリアは頷いて転がった硝子の破片をつま先で蹴飛ばした。
「もっと早く具現化の力が見つかってりゃ、救えた命もあるんだろうなあ」
 しゃがみ込んだセルゲイも、どこか虚ろな瞳で空を見上げる。
「次はそんな風にならないように、あらゆる手段を尽くして記憶を未来に繋げるんですよ。たとえ禁忌に触れたとしても」
 拳を握りしめるダミアンに、フレアとレグルスも頷いた。

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